日本臨床検査標準協議会(JCCLS)とは
1.JCCLSの設立経緯(1983-1985)
米国においてNCCLS(National Committee for Clinical Laboratory Standards,米国臨床検査標準委員会)は、臨床検査の標準化と質的改善を目的として、 College of American Pathologists (CAP)の呼びかけにより1967年に発足し、初代の会長としてRussel J. Eilers元CAP会長が就任しました。その後、ヨーロッパ先進各国にも同様な委員会が設立され、それらを統合する共同体としてECCLS(European Committee for Clinical Laboratory Standards, ヨーロッパ臨床検査標準委員会)が1979年に発足しました。
こうした欧米の活動を踏まえて、わが国でも同様な組織体の設立の気運が高まりつつありました。1983年10月に、第12回世界病理・臨床病理学会議(会長:小酒井望、事務局長:河合忠)が、東京で開催されたのを機会に、その期間中にNCCLS及びECCLSの関係者との意見交換会がもたれました。翌1984年4月に日本臨床病理学会幹事会での議論を踏まえて、「臨床検査の標準化協議会(仮称)」の設立準備が計画されました。臨床病理学会(会長:小酒井望、副会長・標準委員長:冨田仁)から、臨床化学会、医科器械学会、臨床検査自動化学会に呼びかけて、1984年6月16日に第1回設立準備委員会が東京で開催されました。設立準備委員会の事務局は、臨床病理学会事務所(順天堂大学臨床病理学教室)が担当し、4学会が設立発起団体となりました。その後、4回の準備委員会が開かれ、設立趣意書、会則(案)、事業計画(案)などの準備が進められました。
さらに、日本国内の35学会、17協会、7政府機関への加盟呼びかけを決定し、関係書類を送付しました。標準化の活動についていろいろな立場から意見が寄せられ、標準物質の設定や標準規格の提案などについて具体的な事業を進める段階ではないとの判断から、わが国における標準化のための協議を主体に活動することとし、会の名称は「日本臨床検査標準協議会(Japanese Committee for Clinical Laboratory Standards:JCCLS)」としました。
2.JCCLSの発展期
役員の選出と運営組織
JCCLSの設立総会は1985年8月27日に開催され、4発起学会を含む14学会と8協会団体が加盟して正式に発足しました。事務局は臨床病理学会事務所に置き、各団体・学会から推選された評議員からなる第1回評議会を12月16日に、さらに評議員から選出された幹事からなる第1回幹事会を翌1月10日に開催しました。そこで下表に示す通り初代役員を選出し、その後、現在に至るまでJCCLSの会員団体から役員を選出して参りました。
JCCLSの歴代三役メンバーの氏名(略敬称)
西暦年度 | 会長 | 副会長 | 監事 | 監事 |
---|---|---|---|---|
1985-1986 | 小酒井望 | 松橋直 | 織田敏次 | 河野賢一 |
1987-1988 | 小酒井望 | 山中学 | 織田敏次 | 小林泰明 |
1989-1990 | 山中学 | 三輪史朗 | 織田敏次 | 小林泰明 |
1991-1992 | 三輪史朗 | 河合忠 | 遠山博 | 黒住忠夫 |
1993-1994 | 茂手木皓喜 | 河合忠 | 遠山博 | 黒住忠夫 |
1995-1996 | 河合忠 | 黒住忠夫 | 菅野剛史 | 山下勝治 |
1997-1998 | 菅野剛史 | 黒住忠夫 | 大久保昭行 | 山下勝治 |
1999-2000 | 河野均也 | 今井秀孝 | 渡邊清明 | 山下勝治 |
2001-2002 | 渡邊清明 | 今井秀孝 | 櫻林郁之介 | 赤石清美 |
2003-2004 | 渡邊清明 | 今井秀孝 | 菊池博 | 赤石清美 |
2005 | 渡邊清明 | 今井秀孝 | 菊池博 | 赤石清美 |
2006-2007 | 今井秀孝 | 濱崎直孝 | 近藤義彦 | 赤石清美 |
2008-2009 | 濱崎直孝 | 高木康 | 近藤義彦 | 箕輪正和 |
2010-2011 | 濱崎直孝 | 高木康菊地博 | 近藤義彦 | 箕輪正和 |
2012-2013 | 高木康 | 矢冨裕菊地博 | 近藤義彦 | 箕輪正和 |
2014-2015 | 高木康 | 矢冨裕菊地博 | 近藤義彦 | 箕輪正和 |
2016-2017 | 高木康 | 矢冨裕菊地博 | 近藤義彦 | 吉村洋一 |
2018-2019 | 高木康 | 矢冨裕小野徳哉 | 吉村洋一 | 望月克彦 |
2020-2021 | 高木康 | 矢冨裕小野徳哉 | 吉村洋一 | 望月克彦 |
2021-2022 | 高木康 | 矢冨裕小野徳哉 | 近藤功治 | 繁田勝美 |
2023-2025 | 高木康 | 矢冨裕小野徳哉 | 繁田勝美 | 保知戸和憲 |
会則では役員の任期を2年と定め、留任については特に規定はありません。幹事については、発起学会を中心に臨床検査に特に関連の深い学会、主要な関連団体及び特別会員から選出されています。 JCCLSの組織は創立以来ほぼ大きな変更はありませんが、現在の組織図を下記に示しました。1994年までの10年間は、会の円滑な運営を図るために総務委員会、会員選考委員会、企画委員会、情報収集委員会及び広報委員会が設置されましたが、1995年以後は主として担当幹事が任命されています。
学術集会(1987年以降)
JCCLSの一つの大きな事業として、臨床検査標準化を推進するための学術集会の開催があります。第1回学術集会が開催されたのは、創立3年目の1987年8月27日で、その後、毎年1回9月~11月に開催されています。第5回には、初めてNCCLS(現CLSI)会長を招き、第11回からは毎年NCCLS会長の特別講演が組まれています。その年毎にもっとも注目されている主題について、基調講演、特別講演、シンポジウム/パネルディスカッションが企画されています。
臨床検査標準化事業の始まり(1991年以降)
1991年度以降に臨床検査標準化への具体的活動が始まり、会員の中からの発議もあって会則改定準備が進められたのが1992年度であり、会則改定が評議会で承認されたのが1993年2月であった。その改訂の主な点は、以下の2点である:
- ①従来JCCLSの事業が「臨床検査の標準化のための協議」に留まっていたが、「臨床検査の標準化のための協議、検討及び提案」に改められ、より幅広い活動を目指し、
- ②幹事会に前会長と顧問(主として元会長)を含め、事業の継続性を維持する、こととしました。
会則改定によってJCCLSの活動範囲が拡大したことから、さまざまな委員会が設置されて、具体的な標準化への貢献が高まっていきました。
現在、下記に示した各種専門委員会が精力的に活動しています。
常置委員会と専門委員会
-
* 標準物質戦略委員会
専門委員会 -
(1)リウマトイド因子標準化検討委員会
(2)多項目実用参照物質委員会
- * 標準化委員会
専門委員会 -
(1)遺伝子関連検査標準化専門委員会
a)本委員会
b)作業部会:WG-2 -
(2)糖尿病関連検査標準化委員会
(3)臨床検査互換性・認定委員会
(4)血液検査標準化委員会
(5)血清ビリルビン分画定量標準化委員会
-
* 認証委員会
専門委員会 -
(1)認証評価委員会
- * 教育・出版委員会
専門委員会 -
(1)尿検査標準化委員会
a) 作業部会:尿試験紙検査標準化委員会(2)標準採血法検討委員会
(3)用語委員会
(4)基準範囲共用化委員会
(5)機関紙発行委員会
- * 国際委員会
専門委員会 -
(1)ISO/TC212国内検討委員会
(2)ISO/TC272国内審議委員会
(3)国際業務委員会(JCTLM、CLSIなど各種国際機関に対応)
3.JCCLSの公益法人化
NPO法人というと社会的にはボランティア活動の団体というイメージが強く、一般的に、多くの医学系の団体は、社団法人として活動しているため、本会としても、社団法人として活動するのが本会の事業内容に合うものと考えました。また、公的機関等から補助金事業や委託事業を受ける際にも、社会的信頼性の高い公益法人の方がより本会の趣意に沿うものと思われます。その他、各学会や研究機関等へ事業の協力をお願いする際や本会の事業活動を広く普及啓発する際においても、社会的信頼性の高い公益法人の方が、より円滑に事業を進めることができ、本会の公益的な事業活動をより社会全般に広げることができるものと考えております。すなわち、公益性の高い法人格である公益社団法人として実施した方が事業内容に合うものであります。 以上の理由により、本会は、NPO法人から公益社団法人化を目指し、2020年4月21日より、「公益社団法人 日本臨床検査標準協議会」として再出発いたしました。